災害救援ボランティア講座の10年と大学への普及(2015年記事)

※この記事は2015年4月に執筆しました。

目次

サマリー

筆者が東京地区(大学)での災害救援ボランティア講座(主催:災害救援ボランティア推進委員会ほか)の運営に関わってから今年で10年となりました。この10年間、災害救援ボランティア講座を受講し修了する学生(大学生~中高生や専門学校生も含む)が増え続けています。

年間の修了生数の6割から7割は学生で、講座が始まってから20年間の総数の43%が学生(講座修了当時)という状況にまでなっています。学生が在学中に防災や災害ボランティアについて正しく理解したうえで、これからの社会を担うことが、日本の防災力底上げ、そして向上につながります。

10年間増加し続ける災害ボランティア講座の受講学生

「災害救援ボランティア講座」ですが、年々開講数が増えています。平成16年度は年間10回だった講座全体の開講数が、平成26年度には19回とほぼ倍の開講数になりました。

これに伴って「講座修了生数」も年々増え続け・・・と言いたいところですが、そうでもありません。平成16年度の講座修了生総数は377名に対し、平成26年度は454名でした。10年前と比較して2倍も講座を開講しているにも関わらず、修了生数の伸びは20%程度に留まっているということであり、1回の講座の修了生数は減少しています。

「東日本大震災が起きて、災害救援ボランティアについて知りたい人が増えたはずでは?」

と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。その疑問についての回答は「(一時的には)増えた」ということが、統計値でも裏付けられています。東日本大震災の起きた平成23年度(2011年3月)以降の平成24年度、平成25年度はいずれも500名を越える修了生数となっていますが、平成26年度では500名に至りませんでした。

東日本大震災など、大きな災害が起きてからある程度の期間が経つと、災害救援活動や防災への社会的な関心は”相対的に”低下していく傾向にあります。そのことが、講座修了生数にも影響していると考えられます。

ただ、減少しているだけでなく大きく上昇しているポイントもあります。そのポイントは、今後数十年の防災対策や災害ボランティア活動にも良い影響をもたらすポイントです。

何かというと講座受講生・修了生数に占める学生(大学生、中高生・専門学校生)の割合が大きく伸びていることです。具体的なデータを示すと、平成16年度では33%しかなかった学生の割合が、平成22年度には71%になり、平成26年度においても64%まで上昇しています。

災害救援ボランティアや防災に関する講座は様々なものが開講されていますが、これほど顕著に、かつ継続的に若者が参加し続けているのが、筆者が関わっている講座の特徴でもあります。

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表1 講座修了生数に占める学生の割合(黄色マーク)

「大学で」開講ではなく「大学が」開講する講座に意味がある

こうした特徴を生み出したのは「大学が主催して講座を開講する仕組み」です。専門的な知識や技能を有する外部団体が、「大学が」主催する災害救援ボランティア講座に協力し、大学は、講座を受講した学生や教職員がともに、平時の防災活動や災害時の協力体制構築をしていく仕組みです。「大学が」主催しているのがミソで、「大学で」外部団体が主催している仕組みとは異なります。

大学主催の講座を数多く実施している東京地区に関するデータを示します。平成16年度の修了生数は、186名中91名が学生(5回開講)でした。平成26年度の修了生数は、297名中227名が学生(12回開講)でした。

数値を比較すると修了生数が62.6%増、学生比率は27.5%増、開講数は7回増えています(神奈川地区、千葉地区は修了生総数、学生比率いずれも減少)。

累計値ですが、学生の講座修了生数が多い大学ベスト5は次のとおりです。

1位 明治大学 451名
2位 専修大学 360名
3位 中央大学 351名
4位 法政大学 295名
5位 富山大学 245名

いずれの大学も大学やボランティアセンター等が中心となって、災害救援ボランティア講座を開講しています(学生、教職員が対象で一般の方は受講できません)。こうしたデータからも「大学が災害救援ボランティア講座を主催」していく仕組みが、多くの学生の参加につながっていることが分かります。受講する学生さんや教職員の方にとっても「大学が主催している」という安心感にもつながります。よく分からない外部団体の講座を受けてイベントに誘われて何だか抜けにくくなり…みたいなことがありません。

一般的に外部団体による講座は、修了後は該当団体での活動や参加を前提としたものが多いのが特徴ですが、弊会の大学における講座は前述のように「大学による、大学・学生・教職員のための」講座を目指しています。それは結果的に大学がある地域の住民や、帰宅困難者支援のためでもあります。

明治大学災害救援班、専修大学SKV、法政大学チームオレンジなど、各大学で講座を修了した学生が参加する学内活動も積極的に行われています。学生団体による大学での防災キャンプ等(下記の記事) での支援にも取り組んでいます。

学生が防災・災害ボランティアを知ることが、日本の防災力向上につながる

災害はいつ起きてもおかしくない状況であることに変わりはありませんが、今後20年、30年に渡って社会を支えていくことになる学生・若者が、在学中にこうした講座を受けていただくことは、将来的な日本の、地域の防災力向上につながります。

大学主催による災害救援ボランティア講座の開催は筆者のライフワークでもありますので、その意味でもこの10年間の活動のなかである程度の成果を出せたことはうれしく思います。できれば、修了生の総数も増やしていきたいところですが、こればかりは少しずつ進めていくより他にありません。

人数も大事ですが、1回1回の講座、ひとりひとりの受講生、そして担当者の方を大切にしながら進めていくことが重要だと考えています。首都圏内の大学を中心に、下記のようなご提案もさせていただいております。

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図 大学主催による「災害救援ボランティア養成講座」ご提案

今後も大学での災害ボランティア講座は新規開講が予定されており、継続的な実施が10年を超える大学も増えてきました。各大学の教職員の方、学生の方のニーズに合わせて開講することが可能ですので、もし関心のある方はぜひお気軽にご相談ください。

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