防災教育支援事業指定校で講演会と教員研修、公開授業は教員が指導

※この記事は2015-11-26に公開され、2016-11-25に更新されました。

実践的防災教育総合支援事業について

ご縁があって、千葉県実践的防災教育総合支援事業、命の大切さを考える防災教育公開授業に指定された学校で生徒向け防災講話、教員研修、公開授業における指導案提供でお手伝いさせていただきました。教員研修では、公開授業で行う防災教育の参考になればと指導案と教材を提供させていただきました。本記事は、その一連の流れや指導案、評価シート、今後のねらいについてまとめたものです。なお、指導案集のみ別記事で公開しています。

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以下、千葉県ホームページからの引用です。

『実践的防災教育総合支援事業』は、文部科学省の委託を受け、防災教育の指導方法や教育手法の開発・普及、学校外の専門家による指導・助言を行い、学校における防災教育・災害管理の充実に資することを目的に、「防災に関する指導方法等の開発・普及等のための支援事業」「学校防災アドバイザー活用事業」「災害ボランティア活動の推進・支援事業」を実施しています。また『命の大切さを考える防災教育公開事業』は、学校が行う防災に関する事業を地域と連携して行い、また、公開することで、災害や防災に対する両者の意識や取組を近づけることを目的としています。同時に、自助・共助の意識の下に適確に行動できる人材を育成し、災害に強い学校とまちづくりに役立てることを目的としています。

全校対象防災講話の内容と評価

まず最初は全校対象の防災講話を行いました。テーマは事業名に準じて『生命の大切さを考える防災活動〜自助・共助の心を育む〜』としました。全員に振り返りシートを配布し、講話の内容についての自己評価を行ってもらいました。およそ90%の生徒が【防災についての意識の変化】や【防災行動への意欲】、【地震災害時の助け合い】について、積極的な評価をしていることが分かりました。それぞれについてご紹介します。

講演レジュメ

講演内容についてのレジュメはPDFデータ及び画像データで公開しています。

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振り返りシート集計結果(数値評価)

講演会後に実施した振り返りシートへの回答結果です。PDFデータ及び画像で公開しています。

 

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振り返りシート集計結果(自由記述)

講演会後に実施した振り返りシートへの回答結果です。PDFデータ及び画像で公開しています。記述形式ですのでかなりのボリュームになります。概略は本記事にも掲載しておりますが、原文をご覧になりたい方はPDFデータをダウンロードしてご覧ください。

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主な自由記述回答の抜粋

振り返りシートに記入された自由記述回答のうちいくつかをご紹介します。基本的に生徒の言葉をそのまま記載していますが、一部読みやすいように修正しています。

▼講演会を聞いて意識が変化した理由

○命を大切にしないといけない思いました。
○今までよりいのちのことがよくわかった。地震のことがよくわかった。
○なくなった命は二度ともどってこないと知って、とても命が大切にしなければいけないと思ったから。
○自分の命だけが助かったとしても、生活・人生は今までどうり行えないかもしれないので、共助・公助が重要。ということを理解できたから。
○災害のときさえ生き延びれば助かると思っていました。しかし、それだけではだめだということもわかりました。

▼印象に残った、家族や友人に伝えたい内容

○防災用具をリュックに入れておくこと いつでも持ち出せるように
○EAST(レスキュー)について(筆者補足:釜石東中学校のボランティア教育プログラム)
○3つのLと休息、水分、すいみん
○アンパンマンで紹介してたコーナー(筆者補足:人を助けるためには身近な人を大切に)
○サイレン(けいほう)の音によってさいがいがちがうこと。くんれんでみんなたすかったということ。
○実際やっていない事はいざと言う時にも出来ないから日ごろの生活でもその事を考えると言う話を家族に話したいです。
○ちゃんと、やったと思っていても、実際に起きたらできない。
○ある中学校の生徒が、震災の時積極的に活動に参加して、小学生を救ったこと。
○人は、自分の興味のないものは、とても速いスピード頭からぬけて忘れること。
○女子学生が、おばあさんを助けることができなかった話がとても印象に残りました。もし、私が何か災害にあったら、他の人(まわりの人)と協力したいと思いました。

▼どんな行動をしようと思うか

○今日ならったドロップ、カバー、ホールドオンを意識して自分の身をしっかり守れるようにしようと思った。どんなときにもくじけず前を見て進もうと思った。
○今までは、ただ防災くんれんをやるだけだったけど、これからはもっとしんけんに覚えながらやろうと思いました。
○日頃から、災害時用にグッズを用意したりしようと思った。
○普段から、災害のことを考える ひなんくんれんを大切にする
○防災グッツがきちんとあるか確認すること。
○●●(地名)はどれくらいのひがいがでるのかをしりたいと思った。
○ひなん場所を家族で決めておきたい。
○防災グッズをじゅんびする。
○防災グッズをチェックしようと思う。
○ひなんくんれんをまじめにやる
○日頃から色々な準備をしておきたいと思った
○自分のできること
○みんなを助けられるようなことができるといいなと思いました。
○かばんにもしものとき用につめておく。
○防災について考える。
○いつ災害がきてもいいように身を守るグッズを用意する

▼その他、自由な意見・感想

○今日、授業を開いてくださりありがとうございます。今まで、自分はあまり防災のことを考えていませんでした。「戦争くらい大したこともないしどうでもいいや」と思っていました。しかし、この授業を通し、災害も人の命のみならず、心や人生もむしばんでしまう脅威であることがわかりました。その脅威から生き延び、災害前のような心身でいられるよう、防災についてもう一度考えたいと思います。もう一度、ありがとうございました。
○話しをしてくださった宮崎さんのお話にじゃんけんのゲーム等もあって、理解しやすく、おもしろかったです!
○助け合いが、こんなにステキな事だとは思いませんでした。スクリーンを使って、説明(演説)していたので分かりやすかったです。
○アンパンマンとか話だけじゃなくて映像などがあり、分かりやすかったです。将来国連に就きたいと思っていたので、こういう防災について国連の仕事もあるのだなと思いました。すごく興味深かったです。ありがとうございました。
○防災について授業していただきありがとうございました!!VTRを見たり、テストをしたり、また学び知識になった事が沢山ありました。赤ちゃんの話や釜石のきせきについても理解がふかまりました。本当にありがとうございました!!
○私達は、平和な毎日を暮らしているので、3月11日を経験したとはいえ、東北の人々が大変だったということが大きく、深く考えていなかったかもしれません。でも今日の講演会をきいて、深く考えることができました。共助をするということは、自助を失敗するかもしれない、しかも失敗したらもうやり直せないということを本当に怖く感じました。今日からしっかりと考えたいと思います。ありがとうございました。

公開授業を想定した教員研修の内容

全校生徒対象の防災講演会を行った翌月に教員研修を行いました。教員研修の翌月に行われる公開授業をどのように展開するか、考えるための機会として設けられました。指導用のスライドは「Slide Share」で公開しています。参考指導案集・教材の紹介については冒頭の関連記事からご確認ください。

 

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教員研修使用スライド(公開)

※当日は上記の項目に従って行ったため多少異なります。

公開授業の様子

教員研修を踏まえて、公開授業が行われました。1学年は「家庭の防災マップづくり」、2学年は「家庭環境に応じた備蓄品」、3学年は「災害時のコミュニケーション」をテーマに行われました。それぞれの詳細は上記記事の指導案に掲載していますので、そちらをご参照ください。詳しい教材や指導方法についてご希望の方には個別に対応させていただきますので、お気軽にご相談ください。

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(1学年:模擬家屋の危険、安全箇所を探す生徒)

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(1学年:教員によるルールの提示、指導案をもとに教員が工夫をこらす)

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(2学年:核家族、拡大家族など家庭環境の違いに応じた備蓄品を考える)

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(3学年:ディスカッションを通じて、困難な状況で解決策を導く力を育てる)

防災教育にとって重要な「伝えたい」想い、大切に

本事例の特徴的な点は「外部人材による講演会」と「教員研修による指導案提供、作成」、そして「全校一斉の公開授業」がひとつの流れでつながっていることです。消防署や日本赤十字社等による防災講演会は比較的多くの学校で取り入れられているかと思いますが、本件ではさらに教員研修を通じて、教員でも指導可能な指導案提供と実際の指導案づくり、そして全校一斉の公開授業へとつながります。

僕は細かな指導案や教材なども公開していますが、これらはあくまで「手段」であり「ツール(道具)」でしかありません。何を伝えたいのか、なぜ伝えたいのかは指導者(教職員、保護者、ボランティアの皆さま等)自らが整理しなければなりません。そのためには「自分がなぜそのことを伝えたいと思っているのか」ということについても考える必要があります。

指導者がしっかりと「伝えたい」想いを持って指導していけば、生徒は必ずそれに答えてくれると信じています。ぜひ、皆さんおひとりおひとりの「どうしてその防災教育をやりたいのか」という想いを大切にしてください。実践にあたって管理職や生徒に伝わるように言葉にするのは難しいこともあるかもしれませんが…本ブログ、本記事がその参考になれば幸いです。

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