医療関係者や事務員など専門職の災害時広域派遣支援トレーニング【資料ダウンロード可】

保健・医療関係者や事務員等の方々を対象とした「平成30年度災害時支援協力員研修」が開催され、昨年度に引き続き講義・グループワーク、広域派遣支援シミュレーションを担当させていただきました。本稿では医療従事者・事務員など専門職による災害時広域派遣支援のトレーニングプログラムをご紹介します。

災害時広域派遣・連携の目的と課題

災害時広域派遣・連携は、被害の大きい市区町村や都道府県にある自治体、各事業所や団体などに対して他の都道府県などから応援に行くという仕組みで、これまでの災害でも行われています。分かりやすいのは消防で、各都道府県や市区町村の消防本部が中心となって、人員や資機材を調整して迅速な災害派遣が行われます。

注釈:本稿では広域「派遣」を行政や防災機関など組織的かつ指示的業務の色合いが強い活動として考え、広域「連携」はもう少し緩やかな繋がり、任意で主体性の強い活動として考えます。

消防分野のミッションは特に緊急期の救助救出活動や被害拡大の阻止であり、迅速さが要求されます。そのことを消防関係者の方は共通認識されていますし、各種制度設計や労務管理もされています。だからこそ普段とは異なる環境でも、スムーズな活動が行えます。被害の大きい地域の事業所や団体だけでは対応しきれない部分を、当該事業や活動に精通した他地域の事業所や団体が補う。それが災害時広域派遣や連携の目的となります。

では、課題は何でしょうか。消防のように指揮命令系統やミッションが明確なら、都道府県域を超える広域派遣・連携もスムーズですが、業種によっては「名前こそ同じだけど全くの別法人で、基幹業務こそ同じだけどその他は全く違う」といったことがあります。

災害時広域支援で誰が何をするのか。誰を、何をどんな基準で派遣するのか。どう調整するのか、経費や労務はどう管理するのか。難しい課題ではありますが、一方で、支援活動の要でもあります。だからこそ、研修や訓練はなるべく具体的に課題を明らかにするプログラムが求められます。

研修プログラム内容と手法

本稿で紹介する研修は午前1つ、午後2つの合計3つのプログラムで構成されています。

座学講義『災害と防災対策の基本~支援協力者の心構え~』

座学講義では、1990年代以降の災害についての事例や教訓、それぞれの被災地での活動経験などから支援協力者の心構えについて紹介しました。特に強調したのは災害ボランティアとして活動するうえで感じた、被災地に関わるうえでの体調管理や心のケアなど安全衛生に関することです。直接現場で活動することがないとしても、間接的に被災現場の状況を見聞きしたり、慣れない環境で数日~数週間生活することも想定されます。派遣前のオリエンテーションで重要なポイントについても触れました。また、BCP(事業継続計画)の流れや災害時の業務フロー等も紹介し、各法人としての災害対策があっての広域派遣支援であることもお伝えしました。

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ワークショップ『災害情報の収集・伝達とコミュニケーション』

ワークショップでは、実際に被災地での活動で経験上、最も重要になることのひとつとして考えている『災害情報の収集・伝達とコミュニケーション』について行いました。防災カードゲーム「クロスロード」を活用して、災害時に起きた様々な課題についてYESまたはNOでそれぞれの意見を出し合います。今回の研修では、より実践的な形となるように「それぞれの意見を出し合ったあとに、各班としてどちらの意見にするかとりまとめる」という過程を取り入れました。

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トレーニング『災害時広域派遣支援シミュレーション』

トレーニング・プログラムとして、各班で災害時の広域派遣支援について考えてもらうシミュレーションを実施しました。冒頭に広域派遣支援に関連する簡単な講義を行い、ポイントを整理しました。その後、支援に向けて初動で何をするか、どのようにして派遣者を選出するか、どんなオリエンテーションを行い組織として派遣者をサポートするかについて模造紙にまとめていただきました。それぞれの班で作成した模造紙は、ワールドカフェ形式(発表者役1名を残し、他のメンバーが他班を回っていく)で共有しました。

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資料の閲覧・ダウンロード

トレーニングで用いた資料の一部は『SlideShare』で公開しており、閲覧・ダウンロードが可能です。被災地の写真や一部図式などは削除していますので、ご了承ください。各ワークに対するポイントなども紹介していますが、こちらは各法人(主催者)の方針やマニュアルによって異なりますので、適宜読み替えてください。

まとめ ~個人・組織の特性・特徴を活かした支援を~

災害時支援協力者研修は、文字通り災害時の広域派遣支援に協力したいと考えている方々向けの研修です。各都道府県で希望者が登録されており、災害発生時にはその登録者の中から、派遣するという仕組みになります。各法人ごとに事業規模も異なりますし、登録している人材の職種や人数も異なります。通常業務に支障が出てしまうような応援派遣は現実的には難しいので、それぞれの強み、個人や組織の特徴や特性を活かした支援がポイントになります。本稿が、被害の大きい地域にある関連法人への広域派遣支援を検討されている方の参考になれば幸いです。

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