災害ボランティア活動の事前説明(オリエンテーション)情報まとめ|2024年更新版

令和6年能登半島地震(2024.1.1)の発生に伴い情報を更新しました。

災害ボランティアセンター等を通じて活動したい方向けの事前説明(オリエンテーション)に関する内容をまとめました。

災害支援に関するネットワークや団体等からガイドラインや各種資料が公開されています。詳しくは下記のまとめからご確認ください。感染症対策については今後も当面は継続する可能性があり、災害ボランティア活動についても地元・近隣など顔の見える範囲で活動できる方が重要になります。

本記事の内容は「広範囲(全国)」からの参集を想定していますが、募集は市内・県内、近隣県を中心に行われる可能性があります。無理に遠方から参集して現地に負担をかけることがないようにしてください。


本記事でいう「オリエンテーション」とは、災害ボランティア活動の目的や流れ、手続きなどを確認することです。災害ボランティア活動現場には、全国から様々な立場・経験のボランティアが集まります。当然ながら、ボランティアひとりひとりに個性や考え方、意識に違いがあります。

そのまま活動に入ってしまうと、活動現場で他のボランティアと衝突したり、被災された方とトラブルになってしまうこともあります。

多くのボランティアがスムーズに活動できるよう、最低限のルールやマナーをきちんと確認するのが、オリエンテーションの目的と言えます。いくつかの段階・方法に分かれており、それぞれ同じ「オリエンテーション」でも、内容や目的が少しずつ異なりますので、確認しておきましょう。

本記事は現地に向かうことを決めている、予定している方向けです。現地で活動しようかどうか迷っている、という方は以下の記事をご覧ください。

オリエンテーションを受けたり、分からないことを確認する機会は「出発前、移動中、災害ボランティアセンター到着時、活動直前」の4回あります。いずれかのタイミングで活動に関する説明を受け、注意事項を確認してください。

目次

出発前のオリエンテーション

お住まいの市区町村にある社会福祉協議会や、NPO・大学、各種団体等で事前に行われるオリエンテーションです。講座型式でしっかりと行う場合もありますし、数十分から1時間程度で行う場合もあります。

この段階では主に以下の点について確認します。個人の場合は、何らかの形で行われているオリエンテーションに参加するか、下記について充分に確認した上で現地に向かうことをお勧めします。

  • 活動を想定している被災地の被害状況
  • 活動日程、おおよそのタイムテーブル、想定される活動内容、同行する人数
  • 天候、気温、ライフラインの状況
  • 持参する個人装備品のチェック、資機材
  • ボランティア活動保険(天災プラン)への加入|ふくしの保険
  • 同行者同士でのグループワーク(活動上の不安や期待、注意点等について)
  • (もし決められるなら)チーム編成、リーダー・サブリーダーの決定、連絡先交換
  • 安全衛生管理について など

移動中のオリエンテーション

バスや車両の中、電車であればホームや待機場所などで行うオリエンテーションです。現地に入る直前に行うオリエンテーションになりますので、体調の確認や忘れ物のチェック、トイレを済ませておくなど、心と身体の準備をする時間です。現地までの移動距離にもよりますが、長時間は行えないので、基本的な項目(活動スケジュール等)は事前に確認しておきましょう。

「しおり」的なものを持参するか作成しておき、目を通すと安心できます。また、遠方だとバスやレンタカー等での移動時間が長くなり、心身の負担が大きくなります。乗り物に弱い方は対策をしっかりと。

  • 活動スケジュールの確認、遅れなど変更があれば調整し、同行者全体で共有する
  • 持ち物を確認し、忘れ物や不足分があれば購入する(特に水分や衛生用品は入念に)
  • 体調が優れない場合は早めに伝える(頭痛、腹痛、気持ち悪さ、寒気、だるさなど)
  • 活動が無理だと思ったら帰る、帰ってもらう(但し、本人の悔しい気持ちに配慮しフォローも必要です)
  • 極度の緊張、不安がある場合や、落ち着かないなどがあれば、申告する
  • 水分補給、休憩、トイレなどを充分にかつできるかぎり頻繁に行っておく
  • 緊急時の帰途方法、連絡先について確認する
  • (乗り物酔いする方は)車酔い等の対策を事前に行っておく

被災地に到着してから受けるオリエンテーション

災害ボランティアセンター(被災地)に到着したら、災害ボランティアセンター(以下「VC」)のスタッフや、ベテラン・先輩ボランティアからのオリエンテーションを受けます。事前のオリエンテーションと重複する部分もあるかもしれませんし、事前の説明と異なる場合もあります。いずれにせよ現場で聞いたことに従い、優先してください。

「事前に聞いていたことと違う」「そんな話は知っているから早く活動させろ」などのクレームでオリエンテーションやスタッフの時間を奪うことは、ボランティア全体のリスク(危険)を高め、トラブルにつながります。例えどんなに経験豊富であろうと、原則としてスタッフ等の指示に従ってください。

どうしても何か言いたいのであれば、口に出す前に熟慮し、チームリーダーや派遣責任者などスタッフ以外の誰かに相談した上で、自分ができることを含めて現地スタッフの方に伝えましょう(ワンクッション置くことで冷静に考えられます)。

ほとんどの場合、職員・スタッフの方もとても疲れていて、遅れがあってもそれはやむを得ずそうなっています。現地の職員やスタッフの方も「被災されている」ということを、忘れないでください。

  • ボランティア登録作業 ※到着したらまずここから。
  • 災害ボランティアセンターの状況について(施設、作業の流れ、基本的ルール等)
  • 「やってほしいこと」と「やってはいけないこと」の確認
  • ニーズの集約状況、前日までのボランティア活動やマッチング(調整)の確認
  • (もしあれば)特殊なニーズ、専門的な知見が必要なニーズと、対応可能者の確認
  • 安全衛生、装備、心のケア、被災された方との接し方など

活動直前でのオリエンテーション

活動現場まで移動したらそこでまたオリエンテーションが行われる場合があります。僕自身がチーム・リーダーの場合は必ず下記の項目を確認します。リーダーでない場合や、リーダーが機会を設けない場合は、必要に応じて確認します。それほど、現場でのオリエンテーションは重要です。

  • メンバーの体調、装備品の確認(自己申告に加えて、ペアを組んでチェック)
  • 依頼された主要な活動内容と天候、気温等の活動環境の確認
  • チームの基本情報確認(リーダー、サブリーダーの決定と共有、名前、連絡先など)
  • ミッション(その現場の理想的な姿、最終目標)、ビジョン(ミッションに至るまでに行う、今日の作業の方向性)、アジェンダ(作業目標達成の課題、今日やるべきこと)、戦略(課題解決の方法=何をやるか)、計画(解決策の実行者と手順=誰が、どうやるか)の確認と共有
  • 積極的に休憩をとること、水分をとること、トイレにいくこと、笑顔を忘れないこと、など

(例)オリエンテーションでの注意事項

筆者自身が出発前~移動中~災害ボランティアセンター及び活動現場でチームメンバーに対して行うオリエンテーションの例を挙げておきます。

  • ボランティア、被災された方の両方に必要な安全衛生の3原則があります。「定期的に休みトイレに行く、食事と水分を忘れずにとる、しっかり寝る」ことです。まず この3つが可能な限り確保できる環境を確認し、もしなければ作ることです。多くの事故や体調不良の原因はこれらが欠けることによるものだからです。
  • 避難所や活動中に、次のような人を見かけたらいたら声をかけ、速やかに医療関係者に伝えてください。
    ▼突然おう吐する ▼ひどい下痢 ▼激しい頭痛 ▼胸痛・腹 痛、右肩から背中にかけての痛み(心臓疾患の疑い)
    ▼水に長時間浸かり、着替えていない▼いずれも放置すると大変危険
    です。
  • 避難所や活動現場では高齢者の方、子ども、妊産婦さん・乳幼児等に特に配慮します。ご高齢の方は身体や心の不調が自覚できず見逃しまうことがあります。子どもはうまく言葉で伝えられません。妊産婦さんは「迷惑をかけたくない」と感じます。積極的に声をかけてください。
  • 「自分はボランティアだから、常に被災された方を助け支える側でなければならないし、私にはそれが出来る」という想いは自分も周りも苦しめます。自分は大丈夫という自信のせいでストレス反応を見落とします。心の痛みに気付いた時はもう、深刻な状態です。「あなたができることなのだから、あなたの代わりをできる人はたくさんいる」ということを忘れないでください。
  • 活動中に起きる失敗には3つのポイントがあります。(1)知りたい情報が入手できなかった。(2)情報を入手するのに時間をかけすぎた。(3)情報の意味を理解していなかった。要するに、ほとんどの失敗は、ルールや約束をきちんと確認し、情報を正しく理解しておけば防げるものです。分からないことは恥ずかしがらずに確認し、自分が得た情報は必ずチームで共有してください。
  • 家族や友人のことを想い、感謝することを忘れないでください。家族や友人が病気、事故、トラブルにあっていても同じように被災された方のことを考えられますか。被災された方への想いは、あなたにとって、大切な人が支えてくれていることを忘れないでください。
  • 被災地という地名はなく、被災者という人もいません。あなたが片付ける家財などは誰かの財産であり、誰かの思い出でした。被災された方の気持ちをは分からなくても、目線を同じくすることを、忘れないようにしてください。
  • 被災地で活動するだけが災害ボランティアではありません。活動が終了しても、地元へ帰っても、何年経ったとしても、その時その人にできることがあります。例え今は何も変わらないように見えても、どうにもならないように思えても、焦る必要はありません。

安全衛生ガイドを印刷して持参してください

下記の記事で紹介している安全衛生プチガイドを、活動日数分、プリントアウトして持参すると良いでしょう。数日間活動される方も油断せずに日々確認することをお勧めします。

まとめ

災害ボランティア活動は、被災された方にとって大きな助けになります。その一方で、災害ボランティアが体調を崩したり、ケガをしたりすると、依頼した被災された方は「被災した」事実に加え「ボランティアさんに迷惑をかけてしまった、申し訳ないことをした」と心を痛めます。災害ボランティアが活動現場で体調を崩すこと、ケガをすること、トラブルを起こすことは、被災された方を二重で苦しめます。そのことを充分に理解したうえで、『自分は大丈夫だ』と油断せずに、現地での活動に取り組んでいただければ幸いです。

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